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税務調査の歴史②の続き
平成から令和時代へ、新時代が始まりました。西暦は2018年2019年と進んだだけで何のことはありません。しかし我が国は元号によって時代を紡いできたのです。昭和から平成、そして今令和へと連綿と続く元号ですが、不思議なことですが、節目、時代の転換を示してきたことは、歴史が物語っていると思います。消費税は昭和にはなく、平成になって登場しました。さて消費税の登場は、税務調査にも実は多大の影響を与えたのです。それまでの日本の税制は直接税、つまり利益≒所得に対する課税である所得税、法人税が柱であった訳です。間接税もありましたが、酒税、物品税等々の間接税と新しい消費税は同じ間接税でも全く次元の異なる税であります。消費税の登場は、直接税中心税制からの転換ということでした。もう一つはKSKシステム(国税総合管理、国税のK総合のS管理のKの略)の導入です。やや長いですが国税庁の説明を引用しますと「Ksk導入前は経済成長に伴う事務量の増大や質的な複雑化に対応するため、事務の合理化・効率化のためにコンピューターの活用を推進。昭41年から都市4国税局にコンピューターバッジ処理導入拡大。昭54年~地方局にもオンライン処理を主体としたシステム導入・拡大」との説明。そしてKSK導入について「都市局と地方局で異なったシステムから全局、全税務署をネットワーク・オンライン処理システムに統一。経済取引の複雑、広域、情報化の急速な進展等を踏まえ、地域や税目を超えた情報一元化管理のため、発展性のある新しいコンピューターシステムの導入。とし、昭63年導入決定、平7年試行開始4税務署、平9年東京局管内全税務署導入、平11年大阪局全税務署導入、平12年名古屋局全税務署導入、平13年全国導入完了」と解説されています。
平成になって、消費税導入と国税の電算化システムの変更(KSKシステム導入)という大きな「変革」が、税務調査にどう影響を及ぼしたのか、税務調査の歴史を語る上で欠くことが出来ないのです。先に結論的なお話を致しますと、職人(税務調査官)から、機械化、IT化AI化に舵を切ったと言えますが、果たして税務調査という分野・領域というものが果たしてIT、AIに適しているのか否かが実証的に検討分析されるべきではないか。またKSKシステムの理念は別として、そのレベル、優劣はどうかという点を見極める必要もあります。独断的かも知れませんが税務調査のレベルは確実に低下傾向にあると言わざるを得ないと考えます。そしてその要因は、消費税導入とKSK導入の「副産物」であると思われるのです。
税務当局は経済取引の複雑、広域、情報化の急速な進展云々というフレーズを好んで使用します。外的環境が急変革しており、それに迅速に対応するためには何が必要かという議論です。
何も課税当局側の話だけでなく、税理士(会計士も含め)の現場では「手書き帳簿、手書き税務申告書、決算書等」から「電算化、パソコン化」そして「IT化」へと「目覚ましい変革」が進んだと言えます。しかし私は事務所に50年前から勤務頂いている番頭さんに「昔と今と比べて、仕事の量はどうですか」「各段に楽になりましたか?」と尋ねますが、仕事は減らないと言います。電算化しようがパソコンが普及しようが、電子申告が当たり前の便利な時代となっても、昔と比べ劇的に仕事量は減らないという事実です。
税務調査の効率の最大指標の一つ「実調率」(納税申告件数に対する調査実施件数の割合)は、昭和から平成に入って低下の一途であったということです。合理化、効率化のため果敢に電算化しましたが、効率は低下を防げなかったというのが現実です。
産業界では例えばフィルムカメラは色々手間が多く、ロスが多い。比べてデジタルカメラはそれを克服して余りある。結局、カメラ、写真の業界は、ファイルカメラからデジタルカメラ、そしてスマートホン時代となって、カメラその物が様変わりしました。しかし、こういう劇的変化は多いですが、向き不向きということだと私は考えます。
次回以降は抽象論ではなく、統計データ等、数値面から税務調査が平成に入ってどう推移してきたのかを見ていきたいと思います。