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相続税について
今年もお盆も過ぎやや暑さも治まってきました。お盆の時期は、田舎にお墓参りに帰省されたり、ご先祖様に思いを馳せる季節です。相続に関しても、何かしら話題になる事も多いでしょう。銀行や保険会社などが相続税ビジネスを大きく展開しているのが昨今の世相であります。その要因は、既にご承知の通り、平27年1月以降、相続税の課税最低限が引き下げられたからです。資産家でなくても相続税申告が必要となり、相続税納付が発生するケースが増えたという事です。
そこで今回は、相続税に関して少しコメントさせて頂きます。相続税は他の税と全く異なった特色があります。先ず第一に、相続税に頭を悩ましている方は誰なのでしょうか。残された遺族たる相続人でしょうか?。実は遺産を残される方なのです。しかしその方が天国に旅立たれ、相続が開始しますから、本当に相続税で悩むのは残された相続人様のはず。しかし、世間一般にはそうではないのです。今これを読んでおられる方、あなたが亡くなられたら相続税はあなたの奥様やお子様が払うのです。しかしその心配を一番しておられるのは、「遺産を残す貴方」ではないでしょうか。ここに相続税の特異点があります。
次に、法人税も消費税も所得税も、これ皆、帳簿記録に基いて、利益=所得が計算され、消費税だって売上や仕入れ、経費という収支等の帳簿記録から計算されます。しかしこの相続税は違います。つまり亡くなった方の財産を調べて、その財産に対して相続税が計算される訳です。亡くなった方が保有していた財産を遺産と呼びます。相続人が居なければ、遺産は国に帰属します。遺産が一体幾らあったのか、帳簿を記録している方も中にはおられますが、そうでない方が大半ですから、兎に角、遺産が一体どれだけあったのか、これを調べ、それに基づいて相続税申告をするという訳です。父が亡くなった。さて相続。相続財産の帳簿を見れば直ぐ分かるから安心だ。こう言える方は、皆無。これが現実でしょう。
遺産が幾ら沢山あっても、見つけられなかったら、無いのと一緒です。亡くなった方は自己がどれだけ財産があるのか分かっているとしても、遺族には分からない場合も多いのが現実です。不動産であれば登記しているし、固定資産税の通知も来ているし、分かるとしても、預貯金は通帳などがないと、どこの銀行と取引していたのか、これは調べないとはっきりしません。生命保険も中々厄介です。保険証券がないと、どこのどんな保険に加入していたのか、とにかく、遺産の全貌を把握するには、色々調べないとはっきりしない。これが現実です。しっかり生前に遺言書を書いている、我々専門の税理士に財産管理させているなどの場合は、良いですが。貴方の親がご健在なら、その親が正確にどれだけ財産をお持ちか、これを直ぐ分かりますでしょうか。親は、先々は子や妻に財産をハッキリ説明せねば。こう思ってますが、中々人間、自分の死期を悟っている、分かっている方は少ないのです。それに、まだ大丈夫、まあもう少しして、そう思っている。しかし、お別れ天国行きは、大概の場合、突然やってきます。という訳で、遺族には、遺産の全貌が教えられないまま、相続を向かえた。これが大多数の場合なのが現実です。
貴方が生涯をかけて築かれた財産。これを相続させるのに、相続税は一体幾らとなるのか、税理士にそれとなく尋ねたり、色々調べたり、そして節税対策を一生懸命考える。こういう方は多いです。しかし、残される遺族の方と腹を割って
自分が旅立ったら、遺産はこれだけだからと、相続の道筋しについて、元気な今話し合っている。こういう方は、皆無というのが現実ではないでしょうか。以上が、相続税というものの難しさ、特異な点というお話でございます。
今は高齢化社会です、そして子世代、孫世代と同居は皆無です。銀行や保険会社は、昔と比べ、たいへん冷たいです。
個人情報保護法もあり、まして銀行の担当者とか保険レディというセクションが無くなりました。誰かが死亡しても、周りは何にも言ってくれません。一体親がどこの銀行と取引していたのか。保険は一体どういう加入であったのか。遺言書を書いていたとしても、見つけてくれなかったら、無いのと一緒です。通帳のない預金も多いです。店舗の無い、ネット銀行も、ネット証券も沢山あります。相続税は本当に難しい時代に入っています。節税とかそういう事に悩む以前に、何が一番必要なのか、ここをよくよくお考え頂きたい。これが、私がお伝えしたい一番のメッセージです。
相続税は、税理士の一番の専門領域です。しかし、この税理士にも、実は相続税申告など滅多に扱っていないという素人税理士さんも多数おられます。弁護士さん、これは法律家ですから相続税というより、相続が争族、つまり身内で争いになった時、そういう場合に登場されますが、相続税は弁護士さんも中々詳しくない、専門の税理士に聞くというこれが
現実です。相続は大変、幅の広い、そして奥の深い領域です。どうか良い税理士に巡りあって、生前しかもお元気な、今、じっくりとお考えになる必要がございます。どうか、税の専門家の税理士をお役立てください、