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今後の税務調査体制(未来の税務調査)予測
まず結論を先に箇条書きしてみます。
①強制調査である査察調査は、大幅増員し、体制強化する。
②大企業 国税局調査部の調査 体制を強化する。
③国税局 資料調査課の任意調査 ①査察との連携を主眼に、体制を再構築し増員強化
④税務署 特別調査 体制強化し拡大する。
⑤税務署 一般調査 原則廃止する。代替として、書面照会や関与税理士呼び出し簡易調査を徹底
という形になります。以下少し具体的に記述します。
①は現状では全国の国税局査察部の査察官定員約1500名ですが、倍増強化し、年間の査察着手件数も大幅に増加させる。注 但し、脱税犯としての刑事告発率を現行の70%目標を撤廃し、刑事告発困難事案は、③の国税局資料調査課に調査移管する方向とする。
②大企業 国税局調査部の調査は、増員し体制強化する。
③国税局 資料調査課の調査は、査察部との連携を強化し、定員増員、体制強化する。特に、①査察が着手した事案で、証拠上の観点から、刑事告発が困難な案件について、査察部からの「引継ぎ」を受けて、課税処理調査を徹底する。
④税務署の特別調査は、現状の体制を大幅に強化する。⑤の一般調査を原則廃止するため、課税漏れ申告を防止抑制するため、各署に特別調査班の設置が必要である。 ⑤税務署の一般調査は、大きく体制を再構築する。具体的には、ポイントを絞った「書面照会調査」を基本として、現状の「臨場調査」は原則廃止する。臨場調査は④の特別調査に移行して対応する。 これが近未来の税務調査体制と考えます。以下、その理由と申しますか、必要性についてコメントします。
最も申し上げたいのが、⑤税務署の「一般調査」(具体的には税務官が2から3日程度会社に臨場して行う税務調査を指します)は「廃止」すべしということ。④その代わりに、特別調査(複数の税務官がチームを組んで、1週間程度を投入して課税漏れが疑わしい納税者を絞り込み、重点調査するもの)を拡大する。そして一般調査の代わりは書面照会や呼出し調査を充実させる。これが一番の改革です。
次に、マルサとリョウチョウの役割分担です。これも最重要です。元々税務調査の歴史を観察しますと明らかですが、最初は厳しい調査は、マルサと署の特調でした。つまり大口悪質はマルサ、しかしマルサがこなせる検討には限度もあり、署では特別調査に力点を置く。これがマルサは「刑事告発を徹底的に追及する」となって、マルサの着手件数は大幅に少なくなりました。それに代替して「資料調査課」が創設され、資料情報に基づいて、署でも処理が難しい(大口案件=但し脱税犯として査察で告発を前提にするのも困難)を、資料調査課が切り込むとなった訳でした。この役割分担は合理的ですが、マルサは「刑事告発ありき」に特化しすぎました。年間で全国査察官が着手するのは200件足らず、何故なら「刑事告発」に「固執」するからです。一方のリョウチョウは、大型課税漏れ案件の発掘に活躍しましたが、税務署の調査の低迷、国税通則法改正の影響等で、戦力低下は歴然です。ならば、
マルサとリョウチョウの統合的運用が不可欠ということです。マルサは捜索令状の発布を受けての強制調査ですから、どんどん着手する。そして、着手してから、証拠が弱いとか、散逸しているとかで、刑事告発は困難と判断されたら、査察はリョウチョウに「調査を引き継ぎ」これがポイントです。今まではこの、マルサ事件で告発困難事件はリョウチョウが調査引継ぎするという「システム」は実は全くなかったものです。逆は「査察連絡」とか「査察情報提供」という名前で、沢山ありました。つまり、税務署の特別調査やリョウチョウの調査で大口の不正経理が判明しますと、その段階で、課税部(リョウチョウや税務署)から査察部に対して「書面連絡」が行われ、連絡を受理した査察部では、「刑事告発のすべき事案」となれば、「査察着手」したものです。査察着手となればリョウチョウや署の調査は「その段階で終了」つまり「査察部への引継ぎ」となっていました。その逆をどんどん実施するということです。